温暖地でつくる日本の家..その②|静岡県浜松市の大石設計室は、民家工房法・伝統木工法を駆使した木造住宅・古民家再生を専門とした設計事務所です。「真壁造り」「土・紙・石などの自然素材」「住まいやすさ」など、古い民家に詰まったたくさんの知恵を受け継いだ「民家を継承した家」をつくり、次の世代に残していきたいと考える木造民家・古民家再生工房です。

温暖地でつくる日本の家..その②

2019.04.10

■温暖地のエコ住宅を目指して

 エコとは、エコロジー(環境)とエコノミー(経済)がつながっていて、どちらか一方だけが発展してしてもうまくいかない。環境問題を世界中で解決していくことで世界の経済も発展し、人々が安全で豊かな生活を送れるようにと思いをこめて「エコ」という言葉が使われている..ということだと聞いたことがあります。

 住まいも同様で、つくり手は住まいの三大性能と言われる、1構造の安定、2暖涼(明るさや風通し)、3長寿命、それに加えて省エネのこと、建物の美しさや使いやすさ、そして建設コストなどなど多くのことを満足させなければいけません。

 当たり前のことですが、構造強度が高ければどんなにコストがかかっても良いこともなく、高気密高断熱なら美しく無くても良いことはなく、いくら美しくても劣化要素が多くて寿命が短くてはいけないですよねぇ..でも私たちつくり手がどれかに専門特化してしまうとどうしてもこんな傾向が出てきてしまうというのが正直なところです。とくにエコ住宅というと断熱気密性能と省エネ性能に特化してしまう傾向があるのかなぁ...

 そんなことから、その土地の地形や気候条件と住まい手の環境と共存しながら、さまざまな要素のバランスをとることを大切にして住まいづくりをすすめています。加えて建物の性能や暮らしを考えるとき、何か単独の要素で作り上げるのではなく、いくつかの要素が重なって求める性能や暮らしが出来上がるということも大切なことですね。

■具体的に...

 たとえば断熱を考えてみましょうか。断熱材のみで性能を上げようとすると厚みを増すとか、ウレタンなど高性能な材料を使うということになりますね。すると壁厚が増し熱を持つ量も増え、通気や透湿性能が悪くなってしまうこともあります。そこで、断熱+遮熱+二重通気という手法が出てきます。熱を断つことに放射熱を遮ることを加えます。暑い夏、車の中の温度が上がらないようにアルミのシートをフロントガラスに立てますよねぇ..それを住まいの断熱にも使うということです。加えて遮熱層の両側に通気層をつくることで、湿気はもちろん何らかで侵入した雨水や結露水、熱くなった空気をスムーズに排出することが可能となります。

    Photo_53? 屋根の断熱+遮熱+二重通気

    Photo_52?Photo_50? 壁の断熱+遮熱+二重通気

 もうひとつ窓を考えてみましょう...寒い冬、夜間窓からの熱損失はすごく大きいですね。そこで熱も逃げない(冬季)入れない(夏期)高性能なサッシが使われます。でも私たちの地域では昼間の日射取得もすごく大きいんです。昼間はたくさんの熱を取り入れ、夜になったら逃げないように断熱する。そして夏の強い日差しは閉めることでしっかりと遮る。障子やハニカムスクリーン、ルーバーやブラインドを組み合わせることで快適な窓が出来上がります。

    Photo_56?大開口からの日射取得
    Photo_55?紙貼り上下障子で断熱
    Photo_51?ブラインドシャッターで日射遮蔽
    Photo_54?ハニカムサーモスクリーンで断熱
 暮らしもいっしょで、大きなLDKがどかんとあるのではなく、小さな居場所があってそれらが斜めに重なり合い、その重なりはお庭や借景など外ともつながる...大きなひとつ屋根の下そんな重なりがひとまとめになり、朝日の差し込む食堂で家族がそろって朝食を..ってな感じで暮らしがされる。

    __1    _

                 小さな居場所が重なり合い横にも縦にもつながる

 窓を開け閉めしたり、太陽の光を入れたり遮ったりとひと手間かける。柔らかい朝日を感じて目覚め、暖かみのある夕日を感じながら夜を迎える..とか毎日の生活の中に自然の時間の流れとともに快適に暮らす。指先で鍵を開け、引き戸を静かに閉める、小さなスイッチを押すとかトイレの水を流す...などなど小さななことですが、身体能力や人間の順応性を衰えさせないためには重要なことでは。ちょっと大げさすぎるかなぁ...

 なにかひとつの要素でがんばる!!ってのにはやはり限界があると思いますので、最近は合わせ技で住まいをつくり、暮らしてもらっています。



pagetop