温暖地でつくる日本の家..その③|静岡県浜松市の大石設計室は、民家工房法・伝統木工法を駆使した木造住宅・古民家再生を専門とした設計事務所です。「真壁造り」「土・紙・石などの自然素材」「住まいやすさ」など、古い民家に詰まったたくさんの知恵を受け継いだ「民家を継承した家」をつくり、次の世代に残していきたいと考える木造民家・古民家再生工房です。

温暖地でつくる日本の家..その③

2019.04.11

■最近の二つのそらどまの家の事例を...
 そんな想いから最近手掛けた住まいを二つほど、エコ住宅ということですので温熱環境を中心に紹介させていただきますね。

ひとつ目は『ありたま南町の家』

 ありたま南町の家は二世帯住宅。浜松駅から北へ車で30分ほどの周囲には田畑が広がる150坪の敷地に、18坪の平屋部分と36坪の二階建て部分の子世帯がつながる施工面積70坪ほどの在来軸組工法の住まいです。
 
 屋根はGL鋼板横葺きで子世帯の大屋根には太陽光パネル10Kwをのせています。外壁は親世帯が焼き杉板張り、子世帯は2階がGL鋼板スパンドレル張り、1階が杉板張り一部塗り壁で、屋根外壁ともに「断熱+遮熱+二重通気」。断熱材パーフェクトバリアに可変透湿気密シート張り。開口部はアルミサッシ&普通PG+紙貼り障子またはハニカムサーモスクリーン、日射遮蔽にルーバー雨戸または葦簀・すだれ。床は天竜杉板、壁と天井は珪藻土の壁紙貼りの内装仕上げ。

 子世帯はそらどま換気システム(太陽光パネルの下から給気しています)、親世帯はカウンターアローファンにて室内空気循環しながら第三種換気しています。子世帯は暖房をペレットストーブ、冷房はエアコン。親世帯は床置きエアコンを半埋込して暖冷房。給湯は子世帯がエコキュート、親世帯は太陽熱温水器&ガス給湯器という仕様です。

 温熱性能は、Q値が2.46(子世帯)、2.36(親世帯)、ηA値が1.0(子世帯)、0.9(親世帯)
となっています(どちらも遮熱と日射取得を考慮した数値です)。
 室温シミュレーションでは、冬季の居間、茶の間で15℃を下まわることはありませんが、夏期の寝室では30℃を少し超えてしまいそうです(シミュレーションは、冬は障子を開け日射を取り込み、朝方3時間程度暖房する。夜は障子又はハニカムスクリーンを閉め、雨戸も閉める。夏は室温≧外気温の時は窓を開け、その他は締め切る。昼前くらいからエアコンにて夕方まで冷房する。すだれと雨戸にて積極的に日射遮蔽する)。

 エネルギー消費量は、子世帯が静岡市二人家族の標準エネルギー消費量(合計):63,039MJ≧62,881MJ(99%)▲18,668MJ(太陽光発電による削減量)で標準家庭の70%、電気使用量でみてみると:4,537KW≦5,711KW(126%)▲5,189KW(太陽光発電による削減量)で標準家庭の12%。親世帯が静岡市二人家族の標準エネルギー消費量(合計):63,039MJ≧41,356MJ(65%)、電気使用量でみてみると:4,537KW≧3,288KW(72%)というシミュレーション結果です。

 今年6月に竣工し暮らし始めたばかりで、夏期の温湿度データしかありませんが居間の室温は一日中27℃~29℃、湿度は65~75%と安定しており、2階の寝室でも自然室温で30℃を超えることはほとんどないようでシミュレーション結果より良い環境の住まいとなっているようです。住まい手さんも日射を入れないとか湿気の多い日は窓を開けないとか..暮らしの工夫をしながら、住まい手さんなりの快適を模索しながら生活していただいているようです。

    Photo_57?南からの眺め..

    Photo_58?東からの眺め..



 

 

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