温暖地でつくる日本の家..その④|静岡県浜松市の大石設計室は、民家工房法・伝統木工法を駆使した木造住宅・古民家再生を専門とした設計事務所です。「真壁造り」「土・紙・石などの自然素材」「住まいやすさ」など、古い民家に詰まったたくさんの知恵を受け継いだ「民家を継承した家」をつくり、次の世代に残していきたいと考える木造民家・古民家再生工房です。

温暖地でつくる日本の家..その④

2019.04.12

■最近の二つのそらどまの家の事例を...

 もうひとつは、いいのやの家でご夫婦の終の棲家です。浜松駅から北西に車で1時間ほどの、南には田んぼが広がる高台に位置します。気候条件はほとんど変わりませんが市街地より少し気温が低いというところです。いいのやの家は、かぼちゃ束の方形架構を並べた25帖の無中空間が木造架構の力強さと美しさを感じられる平屋の住まいです。

 屋根はGL鋼板横葺き。外壁はそとん壁塗りで、屋根外壁ともに「断熱+遮熱+二重通気」で、断熱材はセルロースファイバー。開口部はアルミサッシ&普通PG+紙貼り障子またはハニカムサーモスクリーン、日射遮蔽にブラインドシャッター。床はケヤキ板張り、壁は漆喰塗り、天井は和紙張りと杉板張りの内装仕上げ。

 そらどま換気システム(屋根仕上げ材の下から給気しています)+第三種換気。暖房をペレットストーブ、そして冷暖房はパッシブエアコンで全館冷暖房しています。給湯は太陽熱温水器&ガス給湯器という仕様です。

 温熱性能は、Q値が2.16、ηA値が0.8となっています(どちらも遮熱と日射取得を考慮した数値です)。
 室温シミュレーションでは、冬季の居間で15℃を下まわることはありませんが、夏期のには30℃を少し上まわりそうです(シミュレーションは、冬は障子やハニカムスクリーンを開け積極的に日射を取り込み、朝方3時間程度ペレットストーブにて暖房する。夜は障子とハニカムスクリーンを閉め断熱する。もちろん外部のブラインドシャッターも閉める。夏は室温≧外気温の時は窓を開け、その他は締め切る。昼前くらいからパッシブエアコンにて夕方まで冷房する。朝日と夕日はブラインドシャッターにて積極的に日射遮蔽する)。

 エネルギー消費量は、静岡市二人家族の標準エネルギー消費量(合計):63,039MJ≦96,129MJ(152%)であり個別暖冷房(67,218MJ(106%))と比べるとやはり大きなエネルギーを使うことになりますね。電気使用量でみてみると:4,537KW≦ 6,880KW(151%)であり個別暖冷房(3,843KW(84%))との差は同じですが、二期工事にて、隣地果樹園に太陽光発電とV2Hを組み合わせて電気の自給自足をすると、▲14,000MJ(合計で130%)、▲3,892KW(電気で65%)の削減が可能になるというシミュレーション結果です。

 こちらもお住まいになってからまだひと月たらずですが、「すごく使いやすくて気持ちがよく、初日からよく眠れるし、洗濯物がよく乾くんだよね..」と高評価です。温湿度データをみると、室温が26.4~27.2℃、湿度が67~68%と一日中安定しているようです。やはり通気と透湿する壁とそらどま換気システムの効果といったところでしょうか。また自然素材や木の木目、職人さんの手作業が自然界の1/fゆらぎと共鳴しているのかもしれませんね...

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       左上から時計回りに客間、寝室&ロフト、かぼちゃ束方形架構が見える居間、寝室

 

■最後に

 住まいづくりはこれからも高度化し、進化し変化していくことと思います。性能は高い方が、暮らしは便利な方が良いに越したことはありませんが、その結果が本末転倒..ってなことにならないように、絶妙なバランスをとることがすごく大切なことだと思っています。つくり手の考え方やつくり方、そして住まい手の暮らし方で性能数値以上の暮らしが実現できそうな気がしています。 「自然とともに無理なく自然に.. 小さなエネルギーで豊かに暮らせる住まい..」が私にとってのこれからのエコ住宅かなぁ...




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