天竜杉..|静岡県浜松市の大石設計室は、民家工房法・伝統木工法を駆使した木造住宅・古民家再生を専門とした設計事務所です。「真壁造り」「土・紙・石などの自然素材」「住まいやすさ」など、古い民家に詰まったたくさんの知恵を受け継いだ「民家を継承した家」をつくり、次の世代に残していきたいと考える木造民家・古民家再生工房です。

天竜杉..

2018.06.19

杉で住まいをつくる...

私たちの暮らす地域には、人工の日本三大美林の天竜杉がありますね。天竜美林は江戸時代から人工造林され、明治時代に金原明善の治水事業として植林が行われ現在に至ります。

建築材料として使うのが目的だったようで、材種は杉が7割、桧が3割ということです。成長が杉の方が圧倒的に早いので、生産性の面からこんな割合になったようです...

天竜杉は節が少なくまっすぐ伸びていて、赤味があるため水や白蟻に強いというのが特徴ですね。

私が杉を使い始めたのは15年ほど前になるでしょうか。新月伐採(現在では月齢伐採)と出会ったころです。新月伐採というのは、新月を過ぎ満月までの月の満ちてゆく期間の伐採をしないというものです。
「昔から月の満ち欠けによって地球そして生物はその影響を受けて今日に至ってきました、潮の満ち干き、人の出産やサンゴの産卵など...
そして、月は木にも関係しているのです。
木は月のリズムによってその生命活動を変化させており、最適な時期に伐採をすると、デンプン質が少なく、腐りにくい、カビにくい、狂いにくいといった特徴が得られ、色つやの良い、丈夫で良質な木材になります。実際、国宝「法隆寺」は月齢伐採の木で建造されたという言い伝えもあるとか...
実際に新月を過ぎ満月までの月の満ちよう期間の伐採をやめた結果、虫害や腐りが少なくなったと感じられたそうです。(天竜T.S.ドライシステムより)」 これが杉の家をつくるきっかけだったような気がします。

ところで杉にどんなイメージをお持ちですか? その昔、貴族の住まいや社寺は桧で、庶民の住まいは杉で...とそんなことから、杉は安普請とか弱いなどというイメージがついてしまったのかもしれませんね。桧の無節材から上小節、小節そして杉へ..そんなイメージといったところでしょうか。実は私も最初に杉を使ったときは、構造材のコストを考え、杉の特一等材を使ったような記憶があります。表面の節の有り無しで木材の価格は変わります。でも節があっても曲げ強さはそれほど変わらなかったり、中心部の年輪の幅についても極端な場合を除いてあまり影響はないともいわれています。

でも杉は、木目がやさしく、やわらかく、加工しやすい。赤味が多く粘り強く、水にも強く長持ちする。そして断熱性と調湿作用が他と比べて大きいというすばらしい長所があります。強度についても、桧と比べると少し弱いなどともいわれていますが、先ほども言いましたが天竜の杉は赤味がつよく強度(ねばり)があります。ヤング係数(曲げの強さ)が桧と同等の杉が多いんです...ただし、強度のばらつきが多いところがありますので、特に大きな力の掛かる材の選択には注意が必要なところはあります。
また、葉枯らしすることで、辺材と心材の水分がほぼ同じとなり全体が均質化します。このことで製材品の反りや曲がりが少なくなり、材の色艶がとても良くなります。

そんな地元の杉を使うことは、成長過程の気候風土とがあっていることや、微生物や細菌などにも免疫があることから木が長持ちすることにもつながります。

そんな天竜杉は、建物の長寿命や、室内環境を考えた場合には優れた性能を発揮してくれます。木の家を考えるとき 「天竜杉」 とうまくつきあってみませんか。

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