放射..
2014.08.08
熱伝導の三態...
先日丸谷先生の梅ヶ丘アートセンターにてお話をうかがうことができた。RC造の建物はこれまでさまざまな実証実験の場となってきたようです...現在は輻射よる冷暖房ということで、輻射パネルでの冷房を体感することができました。
左上から、黒色が鋼製、白色がポリプロピレン製の輻射パネル。その右がパネルのサンプルでヒートポンプにて熱交換された不凍液が循環するシステム。夏15~20℃、冬30~40℃の水で冷暖房が可能となります。左下が冷房中のパネル、表面を結露させることで除湿しています。右下は±0の扇風機、輻射で冷房するということで空気の動きがないわけなんですが、どうしても冷気のよどみができることと、皮膚表面の放射量を調整するために少しだけ空気の動きを..ということから超微風設定のあるこの1台が大活躍。デザイン性もいいですね..
実際に少しまわしてあげると冷気のよどみも無くなり涼しさがより体感できました。また建物の開口部が大きく熱負荷がありますので、窓にアルミの遮熱シートを立て掛けてみようということに...
遮熱シートの効果は即効性があり、外からの熱もパネルからの放射もここで遮られ冷気の動きをすぐに感じることができました。光速で熱移動するといわれる輻射(放射)の力ってやつを思い知らされますね...
また今回はこんな簡易実験も...
左上は断熱材の熱伝達の比較。フェノールフォームとグラスウールと木繊維断熱材に上から赤外線を当てて断熱材中央部の温度変化を見るというもので、なんと熱伝導率が一番不利な木繊維断熱材の温度変化が一番小さいという結果に...これは材の熱容量からで、熱容量が大きいとなかなか温度上昇しないということです。ちなみに違いは20分間くらいで約20℃でした。冬仕様の家が夏に熱いという理由のひとつかもしれませんね...
右上と下の写真は防湿透湿シートの比較です。左側の黒いラインが見えるのが可変透湿シート、水色のラインが見えるのが断熱材の防湿シート。コップ下部の水を少し加熱させると可変透湿シートのサランラップのカバーには水滴がつき始めます。このようなほんとに身の廻りにあるものでの簡易な実験ですが、水蒸気とか放射熱などの目に見えないものを手に取るように感じることができますね...
ところで、輻射とか放射などの言葉が出ていますが熱の伝わり方ひとつで、熱伝達には「伝導」「対流」「放射」が三態と呼ばれるものです。伝導はその中を熱が伝わること、対流は温度差により上下に熱が移動すること、放射は熱を放射すること..ってのが簡単な定義。家の断熱を考えるときこの伝導と対流により熱量を押さえ込んでいます。ところがこのふたつが全熱伝導の半分以下なんです。残りの半分以上の放射は見過ごしてしまっていたということになるんです。この放射にあたるのが遮熱シートの役割です。先程紹介した断熱材の熱伝達比較では、写真手前に見えている遮熱シートを断熱材上部に置いたときは、断熱材中央部の温度変化はほとんど見られませんでした。
この熱伝導の三態全てを使い100%の断熱効果をはかるということが大切ですね。
建物にかかる力の流れとか居心地の良い空間などと同様に温熱環境も目には見えないものです。これらをいかに感じ取り、美しい木組みや広がりつながりのある間取り、集熱廃熱や風の動きなどをどうデザインしていくかというところはこの仕事の醍醐味と言えるでしょうね...
ちなみにこれが私の見えないものを感じるための4点セット。左から照度計、放射温度計、温湿度計、風速計...これを使って熱のやりとりなどを感じ見るようにしています。
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